BCNR33オーテックバージョン 160号車
2024/01/11BCNR33オーテックバージョン 160号車はストラットタワー交換のご依頼ですが・・・。 現状は以前の修理の痕跡もあり 錆も進行している状態ですが、この段階で色々と違和感はあったのですが、 まずは分解です、久しぶりのオーテックバージョンです。 現オーナー様は中古車で購入されて修復歴有りとはご存知でしたがどの程度の修復歴かは分からない状態との事でした。 ただタイヤの編摩耗や、一番のポイントはNISMOのタワーバーを装着しようとしたところ取り付けが出来なかったとの事でした。 タワーバーも持ち込んで頂きましたので確認してみると、 右側を定位置に仮想装着すると
左側はこの状態です、この位置は個体差が結構大きい部分ですので、修復歴のない車両でも車両によっては数ミリ差はありますがさすがにこれは問題ですね。
まずはフロント周りを分解しました、分解を進めるとさらに色々と見えてきました、
外装パーツの取り付けのネジ穴が長穴加工されています、上は別のBCNR33で穴が円形ですが、下の本車両は長穴に加工されています、という事はこの加工分ずらさないと外装の取り付けに問題が出ると言う事になります。
次は右側ヘッドライトの取り付け穴ですが、こちらも右とした方向へ長穴加工されています、さらに、
コアサポート部のヘッドライト取り付け位置は手前に変更されています。
まずはストラット交換の前にこの車体が以前の事故によるダメージがどの程度で、現在の骨格の状態を把握する必要がありますので、3D計測を行います。
計測時の画像を取り忘れてしまったので別の車両になりますが、三次元計測を行います。
とりあえずフロント周りを計測してみましたが、まずはストラットタワーが取り付け出来なかったのは右側が5ミリ内、左側は6ミリ内になっており左右合計値で11ミリ基準よりストラット間距離が狭いことが分かります。
それ以外にもメインフレームが基準値より高くそして後ろに下がっています。メインフレームが基準値より高くなっている為、ヘッドライトを取り付ける際に長穴加工で下にさげないといけなかったのだろうと予測出来ます。
以前の事故は結構大きなダメージだったようですし、その修理がキッチリできていないのか、もしくは何らかの理由でそこまで修理できなかったのかは事情は今となってはわかりません。
以前にも書いておりますが、車両だけを見て過去の修理方法が正しかったのどうかは判断できません。
その時のオーナー様の要望や修理工場の状況などの要因が分からないからです、手抜きのような作業跡や交換が必要な部品、パネルを交換せずに修理されていたとしても、もしかするとその時のオーナー様が少ない予算の中で何とかしてほしいと修理工場にお願いした結果、出来る限りの努力で修理工場側が行っていたかもしれません。
三次元計測により骨格の状況は把握できましたので、ストラット交換の前にボディの修正作業を行う必要があります。
ジグに載せました、ジグに付いても以前に掲載していますが、要はフレーム修正機の一種です。その名の通りフレームを修正する為の機材ですが、フレーム修正においてまず一番重要なのはどのフレームがどの程度曲がっているかの判断です。
今回のようにかなり大きな事故歴のある車両の場合、基準となる箇所を探すことが難しく、例えば右のフレームが曲がっているのか、左のフレームが曲がっているのか判断する場合、両方とも曲がってい可能性もあります。
画像はR32の物になりますが、このようにメーカーから車両ごとに寸法図が出ています、色々な個所の数値がかかれていますが、前後左右方向もそうなのですが、それらと
この上下方向の基準線が重要になります。基準線が歪んでいるとその上で作る骨格も歪んでしまいます。
つまり修理工場の床が水平でないと骨格も歪んでしまう可能性が高くなります、もちろんそうならないように色々な水平計測ゲージがあり、さらにレーザーを飛ばしてそれを基準線にしたりと工夫しますが、個人的な感想としては不安要素は残ります。
その点ジグ式修正機は頑丈な土台が基準線になりますので、床の状態に左右されません。その上で車種専用の治具を付けますので。この修正機に乗らないようならそこが歪んでいる個所であり、逆にスムーズに固定できるならボディ寸法に狂いはないと言う事になります。
この隙間の分だけメインフレームが高い状態です、なぜこのような状態になっているかを調べていきます。
フロアはジグに複数個所接していることからフロアまでダメージは無いようです(フロア全体が持ち上がっている可能性も無いことは無いですが、全ての計測ポイントが均等に突き上がることはまず無いと思います。)
フロアより先でメインフレームが基準値より高い状態のですが、メインフレームにそのような曲がりは確認出来ません。
見たところ両メインフレームは過去に交換されています。
過去の事故でメインフレームを交換しなければならないほど前方よりダメージがあり、その際メインフレームとバルクヘッドの接合面が持ち上がったと思われます、そのバルクヘッドの引き出しが不十分なまま新品のメインフレームを取り付けたためメインフレームが斜め上にづれた状態で車体に取り付けられたと予想できます。
そこでバルクヘッド部分から再修理を行います。
接合面のシールの隙間から錆が見えていたのでシールを剥がすと、
シール材をめくるとフロアから室内が見えている部分もありました、このような個所も塞いで行きます。
このような錆、腐食による欠損箇所が何カ所もあり復元作業が続きます。
パネルの分解もある程度進みましたので、バルクヘッドを修正しメインフレームを正しい位置に戻す事が出来ました、ここから組み立て作業です。
適正位置に固定して溶接します。
メインフレームの修正とストラットタワーの位置取りが完了です。
ここまでくれば後はいつもの組み立てですので完成が見えてきました。
メインフレームや、ストラットタワーはジグに固定したまま溶接するので位置がずれることはありませんが、今回は過去の修復の再修理も行っていますので、溶接作業の前には各外装パーツを仮組し骨格が修正できているか答え合わせを行います、
年始早々、ハード目の修復作業となりました。